DNSのMXレコード:信頼のしるし?

更新日:2026年9月25日

メールアドレスは必ずドメイン名、つまり @ の後ろの部分で終わります。メールを届けるには、サーバーがそのドメイン宛ての郵便をどこへ配達すればよいかを知る必要があります。その役目を担うのが、インターネットの住所録にある小さな1行、MXレコードです。とても小さいけれど欠かせない存在で……偽のアドレスを見抜くのにも役立ちます。

イラスト:郵便配達員(送信サーバー)が、にっこり笑った住所録(DNS)に @example.com 宛ての郵便の配達先を尋ねています。住所録はMXレコード「mail.example.com、優先度10」で答えています。
図1:配達の前に、送信サーバーはDNSという住所録にドメインの郵便受けの住所を尋ねます。その答えがMXです。

DNSはインターネットの住所録

コンピューターが理解できるのは数字だけ、つまり 203.0.113.10 のようなIPアドレスです。一方、人間は example.com のような名前のほうが好きです。DNSはその翻訳係で、スマートフォンの連絡先が「お母さん」を電話番号に変えるのと同じようなものです。

Webサイトの場合、DNSへの質問はシンプルです。「このサイトはどのアドレスにある?」答えはAレコード(新しいIPv6アドレスならAAAAレコード)です。ブラウザーはそのアドレスへまっすぐ向かい、それで終わりです。

メールには専用の案内板がある:MX

メールは特別扱いされていて、専用のレコードの種類があります。それがMX(Mail eXchanger、「メール交換機」)です。MXは別の質問に答えます。「@このドメイン 宛てのメールは、どのサーバーに連絡すればいい?」

なぜ別の案内板が必要なのでしょう? メールを受け取るマシンは、Webサイトを表示するマシンとは違うことが多いからです。会社はWebサイトをあるホスティング事業者に置き、メールはGoogleやMicrosoftに任せる、ということができます。MXは「サイトはここ、でも手紙はあちらへ」と伝えるためのものです。

Webにはこの回り道は必要ありません。ブラウザーはサイトのアドレスへ行くだけです。ところがメールの場合、メールを受け取りたいドメインはMXを登録しなければなりません。規格には予備の仕組み(MXがなければ、サーバーはドメイン自体のアドレスを試す)もありますが、これは昔の名残で、きちんとしたドメインはこれに頼りません。MXがないのは、郵便受けのない家と同じです。これはガイド「メールは送信者から受信者までどう届くのか」の段階3にあたります。

サービスDNSへの質問レコードの種類
Webサイト「サイトはどこ?」A、AAAA
メール(受信)「このドメインのメールはどこへ届ける?」MX
メール(保護)「このドメインの名義で送信してよいのは誰?」TXT(SPF、DMARC)

レギュラーと控え選手

1つのドメインは複数のMXを登録でき、それぞれに優先度の数字が付いています。覚えておくルールはひとつ。数字が小さいほうが先です。ゴルフと同じですね。ほかは控え選手で、ベンチのゴールキーパーのように、レギュラーが応答しないときだけ出番が来ます。実際にはこんな形です。

example.com.   MX   10   mail1.example.com.
example.com.   MX   20   mail2.example.com.

この例では、メールはまず mail1(優先度10)へ送られます。そのサーバーが止まっていれば、mail2(優先度20)が試されます。Gmailのような大手は、こうして複数のMXを登録し、メールを1通も失わないようにしています。

信頼のしるし……ただし「?」付き

比較イラスト:左は my-bank.example というドメインの家で、郵便受けがあり、MXが登録されていて返信できます。右は free-gift.example というドメインの家で、郵便受けもMXもなく、返信は誰にも読まれず、Baitback が15点の警告を出しています。
図2:MXのないドメインは、郵便受けのない家です。何も送れない……差出人としては非常に怪しいことです。

MXがあるのは、最低限のきちんとさのしるしです。本物の会社、本物の役所、本物の人なら、返信を受け取れるようにしたいはずです。だから、そのドメインには郵便受けがあります。

差出人のドメインにMXがないのは、危険信号です。「差出人」に表示されたアドレスが何も受け取れないということだからです。返信しても、あなたのメールはどこにも届きません。そのアドレスはおそらくでっち上げか、送信直後に捨てられたものです。アドレスを大量に作り出す迷惑メールやフィッシングによくあるパターンです。

注意:「?」が大事です!MXがあっても、誠実さの証明にはなりません。自分でドメインを買った詐欺師は、2分でMXを登録でき、SPF、DKIM、DMARCまで設定できてしまいます。もうひとつよくある勘違いがあります。MXが示すのはメールが届く場所であって、出発する場所ではありません。送信するサーバーがMXである必要はなく、送信を管理するのはSPFです。詳しくはガイド「フィッシング:詐欺師はどうやってメールを届けているのか」をご覧ください。

まとめると、MXなしは大いに怪しい。MXありは良いスタート、でも確認は続けましょう。

Baitback がMXを確認する理由

Baitback でメールを分析すると、ツールは「差出人」アドレスのドメインを取り出し、DNSに問い合わせます。このドメインにMXはあるか、少なくとも予備のアドレスはあるか? 答えが「いいえ」なら、Baitback は警告(「このドメインはメールを受信できません:使い捨てか架空のアドレスです」)を表示し、警告スコアに15点を加えます。

このチェックが単独で使われることはありません。ほかの手がかり(数日前に作られたドメイン、ブランドをまねた名前、SPFの失敗など)に加算されます。すべてを合わせた全体像がスコアを押し上げ、通報すべきかどうかの判断を助けます。

10秒で自分で確かめる

知らない相手に返信したり、リンクをクリックしたり、何かを支払ったりする前に、誰もがこの習慣を身につけるべきです。方法は3つあります。

  • いちばん簡単:メールを Baitback に貼り付けるだけ。ほかのチェックと一緒に自動で確認してくれます。
  • パソコンで(Windows、Mac、Linux)ターミナルを開き、次のように入力します。
    nslookup -type=mx example.com
    MacとLinuxでは、次のコマンドも使えます。
    dig mx example.com +short
    答えに「mail exchanger」や「MX」の行が1つもなければ、そのドメインには郵便受けがありません。
  • オンラインで:無料の「DNSルックアップ」サイトの多くが、ドメインのMXをワンクリックで表示してくれます。

自分のドメインを持っていますか?メールを受信するなら、MXがあるか確認しましょう。そして、メールの送受信を一切しないドメインなら、世界中にそう宣言しましょう。「ヌルMX」と、すべての送信を禁止するSPF(v=spf1 -all)を設定すれば、詐欺師があなたの名前をもっともらしく使えなくなります。

知っていましたか?

  • MXが生まれたのは1986年、DNSそのもののわずか3年後です。メールは、住所録に専用の案内板を持った最初期のサービスのひとつなのです。
  • example.com は誰のものでもない……ほぼ。この名前は、example.org や .example で終わるすべての名前と同じく、1999年から例示用に予約されています。買うことはできません。だからガイドで使われているのです。
  • 「ヌルMX」というものがある。2015年から、ドメインは MX 0 . と登録できます。これは郵便受けに貼る「郵便物お断り」のステッカーです。サーバーは、それ以上試しても無駄だとわかります。
  • 13の名前、数百のコピー。DNSの頂点にはルートサーバーがあり、AからMまでの13文字で名付けられています。でも、それぞれが世界中の数百か所に複製されていて、たぶんあなたのすぐ近くにも1台あります。
  • DNSには記憶力がある。それぞれの答えは、ドメインが決めた時間だけ記憶されます。これをTTLといい、数分から1日までさまざまです。だから、MXを変更しても、あちこちで反映されるまでに数時間かかることがあるのです。
まとめ
  • DNSはインターネットの住所録で、MXレコードはドメイン宛てのメールをどのサーバーが受け取るかを示します。
  • WebにはMXは不要ですが、メールには必要です。メールを受け取りたいドメインは、MXを登録しなければなりません。
  • MXは複数持てます。優先度の数字がいちばん小さいものが先で、ほかは控えです。
  • 差出人のドメインにMXがない:大きな危険信号です。Baitback はこれを検出し、スコアに15点を加えます。
  • MXがあっても誠実さの証明にはなりません。最低条件であって、保証ではありません。

不審なメールを受け取りましたか?

Baitback に貼り付けてください。送信したサーバーとそのホスティング事業者を特定し、通報文を1ステップで準備します。

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